2017年首都圏のあるラーメン屋が月額8,600円で毎日一杯のラーメンが食べられるという、ラーメンの定額サービスを導入して話題になった。 このラーメン屋のラーメンは通常780円~880円の価格帯だが、月額会員の人は一カ月に何日利用したとしても支払う金額は変わらなくなる。そのため、このラーメン屋を多く利用する方ほど得になるという仕組みだ。
この定額でサービスを提供することをサブスクリプションモデルといい、もともとは雑誌や新聞等の定期購読という意味で使用されていたが、近年様々な企業がサービスのサブスクリプションモデル化を進めている。
導入企業の実例
iPhoneやMac等を生産するAppleであるが、2015年にApple Musicという定額で音楽が聞き放題になるサービスの提供を開始した。 今までは音楽1曲1曲をダウンロードする都度費用がかかっていたがApple Musicにすることで好きな時に好きな曲を追加費用なく聞くことができるようになった。
他にはPC向けOSの「Windows」を提供するマイクロソフトが、ビジネス向けソフトウェア「Microsoft Office」の定額サービス「Microsoft Office365」の提供を開始した。
「Office」とはWord、Excel、Powerpoint等のことで、ビジネス用ソフトウェアとしては世界中で圧倒的なシェアを誇っている。従来はPCの購入と同時に「Office」を導入し、そのソフトウェアを使い続けることが一般的であった。そのため、もしも常に新しいバージョンの「Office」を使用したいのであればその都度買い換える必要がある。
そこで顧客はサブスクリプションモデルへ変更することで、サービスを継続している限り常に新しい「Office」を使うことができ、専門家が質問に答えてくれるサポート制度も利用し続けることが出来るようになった。
これらのサブスクリプションモデルはユーザーにとって導入の初期費用を抑えられるだけでなく、継続している限りは常に最新の質の高いサービスを受けることが出来るようになる。
現在この「Microsoft Office365」は個人向け課金者数が3,480万人に達しており、ユーザーからは一定の評価を得ていることが考えられる。
※参考:Microsoft 2019年4Q earnings report
また、これらは継続的に安定した売上が確保できるようになる等、提供する企業側も大きなメリットがある。
例えばマイクロソフトのケースだと、従来はPCの買い替えの都度新しい「Office」を導入するのが一般的であったため、古いPCをずっと使っているユーザーからはなかなか収益の獲得が難しかった。しかし「Microsoft Office365」を導入してもらうことで、継続的に安定した収益の確保をすることが出来るようになる。
導入の注意点
顧客が契約を継続している限り企業は安定的な収益を期待できるのがサブスクリプションモデルの良いところであるが、気を付けなければいけないこともある。
まず導入費用が極端に安く抑えられるため収益化まで時間がかかるという点である。例えばマイクロソフトの6つのOfficeアプリケーションが使えるものを買い切り型で導入する場合通常64,584円がかかる。これがサブスクリプション型だと年間12,744円となるため、サブスクリプション型だと5年以上継続契約をしていただかないと企業側は収益の低下を招くことになる。
投資先としての考え方
投資の観点からサブスクリプションモデル導入企業を分析する場合、加入者数の推移が重要になる。特に直近で導入した企業は多くのコストがかかっていてもすぐに収益化させることは難しいため、利益の一時的な減少には多少目をつぶる必要がある。
また、決算書等では把握するのは難しいが、サービスの質も重要である。サービスの満足度が低ければライバル企業が同じようなサービスを展開した際、顧客を取られてしまう可能性がある。逆に満足度が高ければ定額料金の多少値上げをしてもユーザーが離れる心配が少なくなる。
このように企業がただサブスクリプションモデルを導入すれば良いということではなく、そのサービス内容や導入後の動向をしっかりと見極める必要がある。
サブスクリプションモデルの今後
今後もサブスクリプションモデルを導入する企業は増えていくことが想定される。
衣服や食料品、自動車等ありとあらゆる商品を定額サービスで受けられるようになるという時代が来るかもしれない。
これはお金を払って物を所有するという考えから、物やサービスを使用することに対価を支払うという考えに価値観が変わってきていると考えられる。
時代の流れと共に、企業が提供するサービスも常に変わっていることを覚えておこう。