1年間(1月~12月)の収支が合算されて税金が確定することとなりますが、同じ年に利益と損失が出ている株式や投資信託等を売却した場合は損益を通算することができます。
例えば2022年の3月に売却した株式が30万円の損失だったとします。その後8月に売却した投資信託が50万円の利益だった場合、その年の収支は20万円の利益となり、この部分が課税対象となります。現在日本ではこの税率は20.315%となるため約40,630円の課税となります。
損失の繰り越し
個人投資家の場合1月~12月の損益を合算することとなりますが、年間損益が損失で1年の取引を終えた場合、確定申告を行うことで最大3年間損失を繰越すことが出来るようになります。例えば2022年の年間損益が300万円の損失、2023年が100万円の利益、2024年が50万円の利益、2025年が80万円の利益、2026年が70万円の利益となった場合です。
2022年の損失を3年間繰り越すことが出来るので、2023~2025年の計230万円の利益は2022年の損失と通算することが出来るようになります。この時点でまだ70万円の損失が残りますが、損失の繰り越しは最大3年となるため、2026年の利益は通算できなくなり、70万円の利益は課税対象となってしまいます。
この場合ですと約142,205円課税されることとなります。
年間の収支が利益の場合
確定申告をすることで損失の繰り越しをすることが出来ますが、利益については確定申告をしても繰越すことが出来ません。例えば2022年の年間損益が100万円の利益、2023年が100万円の損失となった場合です。2022年に100万円の利益が出ているため約203,150円課税されることとなります。
翌年の2023年に100万円の損失が発生していますが、利益を繰越すことが出来ないので損益通算をすることができず確定申告しても税金が戻ってくることはありません。
年内での損益通算
年末の時点で年間損益が利益となっている場合、利益を繰越すことが出来ないのですが、年内のうちに含み損を抱えている株式や投資信託等を売却することで損失を出し、損益通算することが出来ます。長年塩漬けとなっているような株式等を年末に損益通算で売却するといった話はよく聞く話ですが、この損益通算には注意する点がいくつかあるのでご説明いたします。
① 特定口座の場合、受渡が翌年になると翌年の損益となる。
株式や投資信託等は約定日と受渡日は異なります。
例えば株式の場合ですと約定日から2営業日後に受け渡しとなります。そのため2022年の場合、12月29日と30日に株式を売買すると2023年の取引とみなされるので注意が必要です。
投資信託は銘柄によって受渡日が異なるため、お取引のある金融機関か弊社までお問い合わせください。
ちなみに余談ではありますが、これはNISA口座での買い付けも受渡日が翌年になってしまうと今年のNISA枠を活用することが出来なくなりますので注意が必要です。
② 複数の証券会社でお取引がある場合は確定申告が必要になる場合があります。
1か所の証券会社で取引をしている場合、損益通算での売買をした後に何もしなくても問題ありませんが、複数の証券会社で取引をしていた場合は確定申告をしないと損益通算が出来ない場合があります。
例えばA証券会社で100万円の利益、B証券会社で100万円の損失となった場合は確定申告をしないとA証券会社の100万円の利益は課税対象となります。
③ 売却した株式を同日に買い戻す際は注意が必要。
「損益通算のために損失が出ている株式を売却したけれど、やはりその株式を持っていたいから、売却後すぐに買い戻したい。」そう考える人は多いのではないのでしょうか。しかしこれには注意が必要です。
現在のルールでは株式を売却して買い戻したとしても、特定口座上は買い付けしてから売却となってしまいます。
例えば1株5,000円で1,000株買い付けたA株式が1株1,000円となっていたとします。つまり現在400万円の含み損がある状況です。この株式を1,000円で売却してすぐに同値の1,000円で買い戻した場合、400万円の損失が計上されそうですが、実際にはそうなりません。
特定口座上の平均取得価額5,000円を1,000株保有している状況から1株1,000円で1,000株を追加で買ったことになり、平均取得価額は3,000円になります。 そして平均取得価額3,000円の株式を1,000株売却したことになりますので、損金は400万円ではなく200万円ということになります。
クロス取引
この場合は売りと買いの日にちをずらすということで対応することが可能です。これは本日売却し翌日に買い付けをするというような流れになります。ただ、日を跨ぐことになるので「値が大きく上昇してしまい買戻しが出来なかった。」というようなリスクが生じます。
証券会社によっては日を跨いでも同じ値段で売買が出来る【クロス取引】という取引方法があります。
これは立会外取引市場で注文を執行することにより、別々の日付で売りと買いの注文を同値で成立させるということが出来るようになります。
このクロス取引については証券会社によって対応方法が異なりますので、お取引のある証券会社へご連絡していただくと良いと思います。
また、弊社の所属金融商品取引業者である楽天証券とSBI証券であればクロス取引の対応が可能です。もしご興味のある方はお気軽にご連絡ください。